今年も「次に来るマンガ大賞」が発表され、私イチオシの「となりの軽音部」が無事Web漫画1位となった。
この漫画についてもいろいろと語りたいことはあるのではあるが、それは別の機会として、今回は、2024年次に来るマンガ大賞のエントリー資格があったものの惜しくも選考漏れとなった作品のうち、私がイチオシの作品を紹介したいと思う。趣味語りうぜーと思われるかもしれないが、現実に居場所のない全裸中年男性など漫画の世界くらいしか居場所がないのだ。私だって西方になって高木さんとイチャコラする青春時代を送りたかったのだ。ドラゴンボールを集めて今すぐかなえたいのだ、いやかなえなければならないのだ!!(誰もいない部屋で壁に向かって語りかけながら)
① ちがう宮原おまえじゃない!
となりのヤングジャンプで連載中の、幼馴染とヒロインに板挟みになる少年を描いたラブコメ。原作者は「今日から始める幼なじみ」の帯屋ミドリ先生。ちなみにこの人は作画もできるため「原作+作画」「作画のみ」「原作のみ」の3形態で連載をしたことがあるという珍しい人。
中学1年生にしてはやや幼い感じのある幼馴染の宮原、主人公のあこがれのヒロインである雪比良さんを中心にして進むラブストーリーが非常に初々しくてうらやましくなる作品。ヒロインの雪比良さんも主人公をまんざらでもないと思っているみたいでどちらに転ぶのか、はたまたハーレムエンドなのか全く予想がつかないのも面白い。
と言うか前世でどれだけ徳を積めばこんな青春時代を送れるんですか僕の前世はどれだけ悪人だったんですかマニ車爆速で回してきていいですか。
② はっちぽっちぱんち
女子格闘技と言う今まであまり漫画として成功していないジャンルに、今年2つの新星が現れて一部界隈で話題になっていたりする。一つは次に来るマンガ大賞2024のWeb漫画9位に入賞した「一勝千金」、そしてもう一つがこの「はっちぽっちぱんち」である。この漫画「この人は殴っていいんだ」のネットミームで有名になっていたので、その一コマを見た人は多いのではないだろうか
双方ともフォーカスされるのが「主人公が内包する狂気」なのであるが、お互い狂気のベクトルが異なるのも面白い。本作は主人公の破壊衝動と言う動物的な狂気を原動力に格闘技の世界を突き進んでいく話。もともと柔道部で鍛えててある程度打たれ強いという素養があるものの打撃系格闘技未経験の主人公がムエタイやら空手やらの経験者とやりあうのは若干無理がある気もするが、そこを獣のような狂気でカバーして相手の心をへし折って決着をつけるというのも今までになかったパターンかもしれない
本作でも一勝千金でも「女子格闘技はノックアウトが少ないから人気がない」と言う分析がされており、それゆえに主人公が頭のねじが外れて手加減なしにぶん殴るおかしな人になっているのかもしれないが、そこからのストーリーの広げ方がお互いに異なるのもまた面白い。元テロリストで絶対的強者として君臨する一勝千金の主人公と、まだ素人でムエタイの選手にさっくり負ける程度だけど無限大の可能性を秘めたはっちぽっちぱんちの主人公。この2作はおそらくこれからも比較され続けるのだろうがお互いに研鑽しながら素晴らしい作品になってほしい
③ 深層のラプタ
おそらくフォートナイトをモデルにしたFPSゲームに興ずる主人公の小学生の少年と、その少年にコンタクトしたAIとの間で繰り広げられる、自称「AI×少年のジュブナイルストーリー」
この作品はどう語ったらいいか非常に難しい。語った瞬間にそれがネタバレとなってその作品の魅力を損なってしまうように思えてしまうのだ。とにかく何も情報がない状態で、黙って1話目から読んでほしい。
一つだけ言えることは「絵柄と見出しのジュブナイルストーリーにはだまされるな」と言うことでしょうか
④ ガス灯野良犬探偵団
かつて1990年代、「金田一少年の事件簿」や「名探偵コナン」で推理漫画が一世を風靡していたことは、私のようなおじさん世代には周知の事実だと思う。その後推理漫画はその敷居の高さから下火になったが(30年近くネタ切れしない青山先生は頭おかしいもとい本当にすごい人だと思う)、2024年、よりによって「シャーロックホームズもの」と言う推理ものの総本山に挑もうとしている漫画が爆誕してしまった。それがこの「ガス灯野良犬探偵団」である
まずこの作品、原作を「地雷グリコ」で山本周五郎賞を受賞し、直木賞候補にもなっている青崎勇吾が担っているというだけでも本気度が伝わると思う。既存の小説を漫画化するだけであれば伊坂幸太郎の「魔王」とか宮島美奈の「成瀬は天下を取りに行く」とかないわけではないのだが、普通こんな売れっ子が漫画の原作を書き下ろすなんてめったにないのだ。そして作画は「リクドウ」で有名な松原利光である。この豪華キャストだけでもご飯3杯食べられる
ストーリーは靴磨き少年のリューイと、シャーロックホームズが出会い、ホームズがリューイの才能を認めて「犬」として雇うところから始まる。いわゆるベイカー街遊撃隊をモチーフにした作品であるが、靴磨きの経験をもとにホームズの推理を補完するリューイ、元マフィアメンバーで暴力担当のジエン、軽業師の少女で突撃隊長的なアビーと魅力的な子供たち、そしてホームズやワトソン、ハドソン夫人と言ったシリーズおなじみのメンツが繰り出すストーリーは本当に素晴らしい。自分はホームズもの未学習なので重要人物を調べながら読んでいるが全然ついていけているので、ホームズものを知っている人知らない人どちらにもお勧めできる作品だと思う
⑤ デベロッパーズ ~ゲーム創作沼へようこそ~
Steamのようなゲームプラットフォームが一般化した昨今、ゲーム開発を個人または少人数のチームで行う、いわゆるインディーズゲームが話題になるようになってきているらしいが(自分はよくわからない)、それをテーマにした作品である。まぁサクナヒメやSlay the Spireもインディーズゲーム出身だし、昨今多いんだろうなぁと
この作品はとにかく業界をしっかり取材し、それを業界素人である我々にわかりやすく解説し、かつ漫画として魅力的であるという、マイナージャンルにありがちな独りよがりなストーリーになっていないところが非常に魅力的である。業界の構造や商習慣、そういったレベルの話まで踏み込んでいるのはやはり読んでいて知的欲求を満たされるので楽しい
ストーリーテリングはありきたりな内容だけど、バックグラウンドがしっかりしている作品は読んでいてとても楽しいので、これからも頑張ってほしいと思う
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以上、とりあえず5作品ほど上げてみた。ほかにも「おぼろとまち」とか「週末やらかし飯」とか「相席どうですか」とかおすすめはいっぱいあるのだが語りだしたら止まらなくなるのでここでやめておきたいと思う。とにかく今年は新作漫画が豊作なので、みなさん自分のお気に入りを発掘してみるがいいと思う